Column コラム

イントロダクション

「プロトタイプ」とは、製品やサービスの原型・試作品です。アイデアを可視化して共有し、機能やUI/UXを検証することで、失敗を早期に発見し、改善を円滑に行う重要な手段です。特に、未知の課題に向き合うデザイン思考のプロセスでは、実践的な試作がイノベーションを推進するカギとなります。

デザイン思考におけるプロトタイピングの位置付け

スタンフォード大学ハッソ・プラットナー・デザイン研究所が定義する、共感→問題定義→創造→プロトタイプ→テストという５段階モデルにおいて、プロトタイプは「考えるために作り、学ぶために試す」フェーズに位置し、前段階の創造活動を具現化し、検証へと繋げる要となります。

なぜプロトタイプが重視されるのか？

プロトタイピングの重要性を以下の４項目で整理します。

1. アイデアの検証：技術的実現性やユーザー要望に応えられるか早期にチェック。

2. コミュニケーション促進：手や目で納得できる形にすることで、関係者同士の意思疎通が円滑に。

3. リスク低減：初期段階で問題を洗い出し、手戻りやコスト増大を防止。

4. 学習循環：試作→テスト→改善という学びのループを早く回すことで、質の向上を加速。

プロトタイプの手法と再現度

• 低再現度（Low-Fidelity）
  スケッチやペーパープロトタイプで、アイデアのアウトラインを即視覚化。コストも時間も最小限。

• 中再現度（Mid-Fidelity）
  ワイヤーフレームやモックアップで、見た目や構造を具体化し、寸法やフローを確認。

• 高再現度（High-Fidelity）
  デジタルプロトタイプ（Figma, Adobe XD, Sketch等）、または実際の部品を使ったリアルモックで、完成品に近い体験を検証。

• ロールプレイ／体験型プロトタイプ
  現場での操作性やサービスの動線を体験しながら検証する方法で、ペーパーモデルでは把握できない感覚を掴むのに有効

スタートアップによる迅速プロトタイピング

近年の事例では、モバイルアプリを開発する起業チームが、開発前に紙ベースのペーパープロトタイプを用いてユーザーテストを実施。その結果、「どこでユーザーが戸惑うか」「どんな機能を望んでいるか」が明確になり、UI/UXの大幅な改善につながったと報告されています。

ハードウェア技術領域における適用イメージ

特にハードウェア製品では、ソフトウェア以上に「初期段階での素早く低コストな試作」が重要です。エンジニアリングチームのような機械・電気設計分野では、以下のような段階的プロトタイピングが効果的です：

• ペーパーモデル／３Dモックアップで外観イメージを共有

• 機能試作で動作や制御部分を検証

• 量産規模モックモデルで外観・機能・ユーザー視点での最終チェック

たとえば、洗浄機の乾燥工程におけるエアノズル配置の検証には、乾燥工程に特化した機能プロトタイプを使って水滴除去効率を比較した実例もあります 。こうした手法により、図面だけでは捕らえきれない課題を一つずつ潰して高品質化を図る流れが有効です。

プロトタイプを外注するメリット

外注の活用は、以下の３点で特に有効です 

• 専門知識・技術の活用：CADモデリング、クレイモデル製作、３Dプリンタ等、技術的資源を持たずに済む。

• 設備・環境の節約：高価な機材・整備環境を持たずに、試作できる。

• 時間効率の向上：実務者がコア業務に集中できるため、全体のスピードがアップ。

まとめ