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【製造業】3Dモデリングの手法と使い分け方を解説│モデリング外注のメリットは?

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2022.07.25

コンピューター上で立体的に表現されたオブジェクトを3Dモデルと呼び、3Dモデルを作成する工程を3Dモデリングと言います。テレビや映画といった分野では3DCGでの表現が古くから使われていました。製造業では2次元の図面が情報伝達手段として主流でしたが、現在、製造業でも3Dモデリングによるバリューチェーンやサービスの変革が始まっています。ここでは、製造業における3Dモデル・3Dモデリングの基礎知識からこれからの活用方法について見ていきましょう。

3Dモデルの種類と使い分け

製造業での3Dモデルは3DCADでモデリングされます。データの利用用途によって、いくつかのモデル形式とモデリング手法が存在します。

ソリッドモデル

立体の内部が埋め尽くされた、体積を持った立体表現で、データサイズは大きくなるものの、材質などのパラメータを設定することにより、重量や重心、応力解析といった技術計算の場面で利用されるモデルです。


図1:ソリッドモデル

サーフェスモデル/ワイヤーフレームモデル

ソリッドモデルに対し内部の情報が簡略化され、中身が空洞で表面や稜線のみの立体表現で、正しい形状を保ったままデータの軽量化ができます。そのため、異なるCADシステム間で3Dデータを受け渡すための中間ファイル形式として利用されます。


図2:ワイヤーフレームモデル

ポリゴンモデル

3Dモデルを小さな三角形の集合体として表現するモデルで、データサイズをかなり軽量化でき、3Dプリンタの標準ファイルフォーマットであるSTL形式として広く利用されています。最近ではWindowsやiOSにも標準でSTLビューワソフトが搭載されており、専用のCADが無くても手軽に3Dモデルが利用できるようになっています。


図3:ポリゴンモデル

CADソフトによる3Dモデリング手法と使い分け

3Dモデルにはデータ形式による利用場面の違いに加え、CADソフトの種類やターゲットによって大きく2つの3Dモデリング手法があります。

ヒストリ型

モデルの操作履歴がデータとして紐付けられるタイプのCADによる3Dモデリング手法です。モデリング初期から寸法を比較的厳密に定義する必要があり、部品寸法が周辺との関係でおのずと決まる製品設計や、部品やユニットの流用設計が多く発生する治具設計で広く使われます。

メリットとしては、スケッチや形状編集の履歴が残るので、設計意図をプロパティとして保存できる点が挙げられます。そのため、とあるポイントまでさかのぼってモデリングを修正したり、スケッチの寸法情報を修正したりすることでパラメトリックに形状を変更することができ、流用設計やチーム設計に適しています。

デメリットとしては、以下の2つがあります。
・履歴が残る分、データサイズが大きくなり、モノを製作する前提でデータ連携機能が充実したCADが多く、CADそのものが高価でPCにワークステーションレベルの高い性能が求められる
・モデルが履歴に拘束されるので、誤った編集を加えるとモデルが成立しなくなる場合があるために、特にチームで運用する場合には厳格なルール決めが必要になる点が挙げられます。


図4:パラメトリック編集

ノンヒストリ型

ノンヒストリ型とは、モデルの操作履歴がデータとして残らないタイプのCADによる3Dモデリング手法です。形状が寸法や履歴によって拘束されず、ブロックや円柱といった基本形状を自由に足したり、削ったり、引き延ばしたりして形状を定義していきます。
ヒストリ型ではすべてを数値で定義する必要がありますが、ノンヒストリ型では自由曲面と呼ばれる、曲率が複雑に組み合わされた曲面も直感的に作成することができます。そのためデザイン性の求められる意匠設計やプロダクトデザインといった用途に適しています。

メリットとしては、操作が粘土細工をするように直感的である点、CADの動作が軽快で、事務用PCで手軽に利用できる点が挙げられます。
デメリットとしては、簡単に形状が変わってしまうのでデータを上書きしてしまうと元の形状に戻せなくなる点、データ連携や図面作成機能といった3D表現以外の機能が弱い点が挙げられます。


図5:自由曲面

また、中にはヒストリ型とノンヒストリ型のハイブリッドのようなCADもあり、部品点数が多く、3D処理が重くなる設備装置のような大規模アッセンブリ用途に適しています。

3Dモデリングの現状

3Dモデリングは視覚的に形状や動作を把握することができ、2D図面の専門的な読解力が必要ないため、プレゼンやデザインレビューの場面で大きなメリットがあります。また、干渉チェックや解析など、従来時間をかけておこなっていた技術的検証も短時間で処理できます。最近では3Dモデルをアップロードするだけで、自動的に部品製作の見積、発注ができるサービスも登場しており、3Dモデリングの視覚的なメリットに加え、モノづくりのプロセスが変わろうとしています。

設計から製造するプロセスだけであれば、いまだに3Dモデルを2D図面に変換して出図されることが多く、従来通り2D図面でこと足りる場合もありますが、グローバルサプライチェーンの構築やモノづくりのスマート化を目指す世界的な流れを考えると、付加価値の高いデジタルデータとしての3Dモデリングの利活用は必須と言えます。

3Dモデリングをアウトソーシングするメリット

3Dモデリングの本格的な利活用には3DCADソフトの導入が必要ですが、そのための課題をまとめると、
・知識、スキル面(加工知識、設計知識、製図知識、モデリングスキル、CAD操作スキル)
・運用管理面(データ管理、ソフトウェアライセンス管理、編集権限管理、セキュリティ管理)
・費用面(高性能PC、ソフトウェア本体費用、年間保守費用)
などが挙げられます。

これらの課題解決には人材採用や人材育成、運用規則制定、設備投資計画が必要になりますが、事業規模や事業内容によってはコスト以上のメリットを享受できない場合もあります。
そういった場合、3Dモデリングの受託制作サービスを展開する企業へアウトソーシングすることで、社内リソースを1から整備することなく、最低限の費用で高品質な3Dモデリングを利用できます。

アウトソーシングを活用しながらデジタル資産としての3Dモデルデータをストックしつつ、徐々に環境を構築し、社内運用へ切り替えることも可能です。

また、3DCADを運用中の企業であっても、先ほどのCADソフトの違いから機構設計や構造設計といった部分は自社でおこない、内外装のデザインやユーザーインターフェースフェースの設計はアウトソーシングでおこなうといったケースもあります。

3Dモデリングのこれから

家庭用の3Dプリンタが手頃な価格から購入でき、3D自体はすでに身近な技術ではありますが、今後さらに3Dモデリングが注目される背景として、デジタルツインやCPS、XR、メタバースといった仮想現実技術のベースとなるのが3Dモデルであるからだと言えます。
また、自動車業界を中心に、モデルベース開発と呼ばれる、モノづくりプロセスすべてが3Dデータベースでつながる開発手法が推進されています。場所や時間を問わず“仮想空間でつながる”のがデジタルデータの強みです。世界各国でその強みを生かしてバリューチェーンやサービスを変革し、スマート=高知能な社会の実現に向かっています。

日本でもSociety5.0として、デジタル技術によって社会基盤のスマート化を目指していますが、そういった社会の実現のためにも3Dモデルが担う役割は非常に大きく、“モノ”の源流である、製造業全体での3Dモデルベースで付加価値の高いモノづくりへの変革が必要です。

執筆者プロフィール
伊藤 慶太
技技術士(機械部門 専門:加工・ファクトリーオートメーショ及び産業機械) 大学卒業後、生産設備メーカーでNC加工業務や半導体関連設備の機械設計業務を経験。 現在は、産業用機器メーカーの生産技術職としてIE(Industrial Engineering)手法をベースに、生産工程自動化設備の計画・設計やIT・IoT活用などよるファクトリーオートメーション業務に広く携わる。