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5Gとは?製造業における5G通信の現状と課題

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2022.07.19

日本では次世代高速移動通信規格である5Gが、2019年のラグビーワールドカップを皮切りに、一般向けサービスが2020年春に開始されました。モバイルやスポーツ観戦などの民生用途としては徐々に広がりを見せています。一方で産業用途としては、さまざまな構想はあるものの、あまり普及が進んでいません。その理由も含め5Gで何ができるようになるのか、何が課題なのか、そして製造業でどのように活用できるかを見ていきましょう。

5Gで実現する社会

5Gとは第5世代移動通信規格の「5th-Generation」の略称です。移動通信技術を順にみると、約10年スパンでの歴史的な流れがあります。

1G:1980年代。アナログ電波で音声通話のみ。
2G:1990年代。デジタル通信によるメールやインターネットの利用。ガラケーの登場。
3G:2000年代。世界標準規格の移動通信規格で、海外での利用が可能となった。iPhone3G(スマホ)の登場。
4G:2010年代。3Gの数十倍速い通信速度で、光ファイバー並みの高速通信規格。動画やマップアプリのスムーズな利用が可能になり、スマホが一気に普及。
5G:2020年代~。4Gに対し最大20倍高速な通信速度で、高速・高信頼・混雑に強い。

5Gの周波数帯の違いによってミリ波とsub6といった規格に分けられますが、共通している特徴としては、
・高速大容量なデータ通信
・低遅延による高信頼性
・同時接続台数の多さ
が挙げられます。

できるようになること

4Gまではモバイル端末をメインターゲットとした技術進歩であったと言えます。一方で5Gは上記の大きな3つの特徴を生かし、モバイルのみならず、無線でインターネットにつながるデバイスすべてがターゲットです。5Gはエンターテイメントやサービス、産業界に新たな体験をもたらす技術と言えます。

高速大容量データ通信

最近では4Kと呼ばれる高解像度の大型テレビや動画サービスが広がりを見せていますが、4Kはフルハイビジョンに比べ4倍のデータ量があり、さらに高解像な8Kではフルハイビジョンに比べ16倍のデータ量となります。オーロラビジョンやプロジェクションマッピングのような屋外での大画面映像配信には4K、8Kが必須と言えます。現在ではオーロラビジョンやプロジェクションマッピングはスタジアムや特定のイベント会場に固定されていますが、5Gによって場所を限定せず4K、8Kのような大容量データが利用できるようになります。

低遅延による高信頼性

インターネットには遅延と呼ばれる通信のタイムラグが発生します。動画配信やブラウジングでは問題になりませんが、無線制御が必要な自動運転や遠隔操作ロボットなど、安全や人命に関わるような制御が必要な場合はその遅延が大きな問題になります。5Gでは4Gに比べ遅延が理論値で1/10以下とされ、信頼性がより高い無線制御が可能となります。それにより自動運転やドローン配達、遠隔医療ロボットなどの発展、普及が期待されています。

同時接続台数の多さ

4Gでは通信するデバイスの台数や密度が大きくなると、通信速度が低下するといった特徴があります。それに対し、5Gでは一つの基地局に接続できる台数が100倍以上となり、通信速度の低下も発生しづらいといった特徴があります。

無線通信の大容量通信や高信頼化が可能になることにより、今までモバイル端末だけであったインターネット接続が、自動車やスマート家電、医療機器、社会インフラなどすべてがインターネットに接続されることになります。そのため、5Gはスマート社会を実現するための、より強固なネットワーク基盤として重要な役割を担うことになります。

Wi-Fiとの違いは

Wi-Fiは家電量販店でルーターを購入し簡単に設置できる、安定した無線通信です。しかしながら、電波規格の関係で、あまり広範囲に電波を飛ばすことができず、移動しながら通信をすると不安定になりやすいため、Wi-Fiは“屋内向け”と言えます。

一方で、通信速度や低遅延、多台数接続といった5Gのメリットを生かし、屋内外問わず、事業所や工場など限られた範囲で5Gネットワークを構築するローカル5Gが、産業界や地方自治体を中心に広がりを見せています。

製造業での5G活用事例

ここでは5Gを利用した、製造業での新しい取り組みについてご紹介します。

高信頼度無線ネットワークの構築

工場内であれば、有線LANを使うこともできますが、スマートファクトリー化の高まりを受け、あらゆる機器がネットワークにつながる可能性を考えると、すべてを有線で配線するのは現実的ではありません。また、生産ラインや生産設備から取得できるデータの量は、事務用途とは比べ物にならないほどデータ量が多く、通信頻度も高くなります。そのため、生産設備を安易に社内LANに接続すると、ネットワーク負荷が高くなり、生産管理システムなどの基幹システムがダウンしてしまうなどの懸念があります。

鋼板加工メーカーA社では、ローカル5Gによるネットワークを構築し、4K、8Kの高精細画像検査システムの運用を開始しました。それにより、作業者が大型設備に近づいておこなっていた検査作業をインラインシステム化し、品質向上と安全性向上を実現しています。

AGVやAMRなどの移動機器制御

製造業では人手不足やJITの7つのムダの一つである、運搬のムダを解消するために、AGV(自律走行台車)やAMR(ロボットアームを搭載したAGV)といった自律移動機器のニーズが年々高くなっています。また、製造業に限らず、ドローンやサービスロボット、無人農耕機械など、あらゆる分野での自立移動機器の活用が進んでいます。

従来、AGVは床に設置された磁気テープやアライメントマークを認識し、移動する軌道追従型が主流でした。しかし、床の磁気テープやアライメントマークは汚損しやすく、走行ルート変更のたびに張替えが必要になるなど、フレキシビリティが低いものでした。そこで、Wi-Fiや構内ビーコンで測位しながら制御する方式も登場しましたが、Wi-Fiは限られた範囲にしか電波を飛ばすことができないため、屋外や建屋をまたぐような場面での通信には適しません。また、Wi-Fi基地局を複数台設置しても、基地局の切り替わりで通信が断絶する恐れがあり、信頼性や安全性の懸念が発生します。

工作機器メーカーB社では、通信事業者との共同で、5GネットワークによるAGVやロボットの遠隔操作に取り組んでいます。これにより、大規模工場での自律的でフレキシビリティの高いAGV運用や、モノづくりのリモート化などが期待されています。

スマートデバイスとの大容量通信

微細な組立作業や、イレギュラーが多い保全作業など、自動化が困難で人手が適している領域の作業も存在します。そこでは作業者の育成や技能伝承が必要ですが、労働人口が減少している状況では、人材育成や技能伝承をする側もされる側もリソースを十分に確保できません。

そこで注目されるのが、ウェアラブルデバイスでのARやMRといった仮想現実技術の利用です。作業者が身に着けた端末にARによって作業指示書や図面、技術情報などといった情報を表示させることができます。また、遠隔拠点からの作業サポートといったことにも5Gの高速大容量、低遅延といったメリットが生かされます。

5Gの課題とまとめ

5Gの普及はモバイル以外ではあまり進んでいるとは言えません。その理由として、
・特に日本では全国隅々まで高品質な光ファイバー回線が整備されている
・5G基地局設置には第三級陸上特殊無線技士資格と申請手続きが必要
・5G関連機器が高価
といったことが挙げられます。

しかしながら、世界的なスマートファクトリーやスマートシティ実現の動きは着実に進んでおり、5Gが担う役割は大変重要と言えます。現段階ではコストや技術的障壁が5Gで得られるベネフィットを上回っているとも言えますが、確実に逆転するタイミングがやってきます。今後の通信環境の変化やそれに伴うサービスの変化などに注目です。

執筆者プロフィール
伊藤 慶太
技術士(機械部門 専門:加工・ファクトリーオートメーショ及び産業機械)
大学卒業後、生産設備メーカーでNC加工業務や半導体関連設備の機械設計業務を経験。
現在は、産業用機器メーカーの生産技術職としてIE(Industrial Engineering)手法をベースに、生産工程自動化設備の計画・設計やIT・IoT活用などよるファクトリーオートメーション業務に広く携わる。

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