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AIチップとは?エッジコンピューティングに必需品となる?

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AIチップという言葉を聞いたことがある方も多いかもしれませんが、AIチップとはどのようなもので、なぜ今注目されているのかをご存じでしょうか。AIチップが注目されている背景から今後の展望について順に解説します。

クラウドサーバへ送信されるデータ量が増大

近年、IoT機器などからデータを取得し、そのデータを閲覧ができるようクラウド上に蓄積をする方法がとられています。
AIの機能もクラウド上に共有し、共通化することでAIの開発費用にスケールメリットを持たせて、安価にAIを利用してもらう手段をとり、AIを普及させる方法が取られていきました。
しかし、このままIoT機器からの膨大なデータと、それを処理するためのAIをクラウド上に置き続けると、データ量が際限なく膨れ上がってしまいます。
利用するサーバの費用が増大するだけでなく、クラウドを運営する側の負担も大きくなります。
マイクロソフトのクラウドサービスの「Azure」が、2022年7月に新規契約が一時受け入れ不能状況になったと報じられました。
クラウドを運営する企業は、急激な需要にサーバ増強が追い付いていない状況だということが改めて明らかになりました。クラウドサーバだからと言って、無限にデータを保存することができるというわけではありません。

エッジコンピューティングとは

そんなクラウドサーバの容量不足が叫ばれている中で注目されているのが「エッジコンピューティング」です。
エッジとは、「端」という意味の英語ですが、具体的には今までクラウドサーバ側で演算や閲覧などを行っていたものをIoT機器側で行おうというものです。
IoT機器はデータを測定して、サーバ等の遠方に通信回線を通して転送する機能しか持っていない簡易的なものでしたが、これにデータ処理や一部データ保存の機能を持つようにします。
これにより、クラウドサーバに送るデータ量の削減を行います。
エッジコンピューティングには、IoT機器を統括してデータを蓄積する簡易サーバもエッジ側に含まれることから、設備導入後の運営にも、より高度なITスキルが求められます。
エッジコンピューティングの最終形は、クラウド上には最終的な結果のみが蓄積され、今までとは比べ物にならないほど少ないデータ量のみの送信となります。
今までのIoTはクラウドに送信すれば次のステップとして、ユーザー側の手から離れる形態を取っていたシステム管理者の方も多かったかもしれません。
エッジコンピューティングではAI演算処理や簡易的なサーバ構築までが業務範囲となります。

IoT機器での演算・集計にAIチップ

では、今までクラウド上に置かれていたAIはどこに置くようになるのでしょうか?
IoT機器を統括する簡易サーバに、AIのような処理プログラムをクラウドの時と同じように置くとサーバ容量が増え続けてしまいます。また、IoT機器が置かれる場所は設置スペースが限られており、データセンターのような広さを確保することができません。
そんな時に活用できるのがAIチップです。

AIチップとは

文字認証や画像認証など、既にAIアルゴリズムが開発され、さまざまな場面で生かされているAIが数多くあります。
こうしたAIは、開発当初は膨大なデータ量のAIアルゴリズムにより最終的な結果が出されていたのですが、普及段階となったことで線形回帰やアノテーションなど、少ないアルゴリズム動作で今までと同じ結果を出すことができるAIが開発されています。
こうしたAI開発の成果により、データ量の少ないAIは省電力で動作に必要なストレージも少ない状態で動作が可能となりました。

こうした普及段階のAIを小さなICチップに詰めたものが「AIチップ」です。

AIチップがエッジコンピューティングで活用が期待されている

AIチップは、回路基板の一部として搭載ができるほど小型化されたAIです。
IoT機器は、工場設備の効率的運用やDXを実現するために補助的な役割をする機器と言えますので、専用のスペースは限られており、小型化できるほどよい、と言えるでしょう。

エッジコンピューティングが本格的に取り入れられる段階に入った場合、今までのIoT機器よりも多くのスペースが必要となり、処理に必要な電力も必要となります。
普及段階に入ったAIを活用する場合には、AIチップを用いることでエッジコンピューティングを導入する際の必要スペースや電力を最小限に抑えることができます。

AIチップに搭載できるAIは今後も増えていく

AIチップは、まだ登場したばかりの画期的なAIは性能上搭載することができません。
しかし、文字認識やエアコンの体温センサによる温度調節など日常にありふれたAIは、既にAIチップに搭載して小型化することができます。
今はまだ、その性能が高いため、処理に必要な電力やアルゴリズムストレージ、処理速度などのリソースが大きいAIでも、今後多くの効率化手法が考案される可能性があります。
研究開発だけでなく、ディープラーニングなどの自動化により、AI自身が効率的なルートで求める結果までの省力化を図る可能性もあります。

こうした開発が進めば、AIチップに搭載できるAIが増えていき、エッジコンピューティングで行える処理や演算が増えていきます。
AIチップに搭載できるAIが増えていけば、クラウドサーバを活用しなくても、より高度なデータ分析や業務効率化の検討を行うことができるようになるでしょう。

執筆者プロフィール
西海登
ビルメンテナンス業界から産業用機器の電気設計職へ移り、設備関連の保守点検から構築に関する業務を経験する技術者。近年ではIoT関連の業務にも携わる。本業の技術職の傍ら、webライターとして活動中。

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