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プロトタイプがデザイン思考で重視される理由とは

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2022.02.25

「プロトタイプ」とは、ある製品の原型あるいは試作品のことで、実験機・試作機などとも呼ばれます。対義語は「マスプロダクションタイプ」=量産品。開発者・設計者の頭の中のイメージを人に伝えたり、新機構の検証や性能試験に用いられたり、量産前の問題点の洗い出しに使われたりします。
プロトタイプを制作する意義は多様にありますが、ここでは「デザイン」という視点にフォーカスして解説していきます。

デザイン思考において重視されるプロトタイプ

最近では、多くのビジネスシーンで「デザイン思考」という言葉が見受けられるようになりました。というのも、デザイン思考はデザイナーなど一部のデザイン制作過程だけで活用されるわけではなく、前例のない課題や未知の問題に対して最適な解決法を図るための思考法だからです。
先行きが不透明で消費者のニーズが多様化した現代では、それぞれのターゲットに最適な解決法を考える必要があります。そのため、デザインの専門を超え、多くの企業でイノベーション創出・課題解決などを目的に注目されている手法の一つです。

では、デザイン思考とはどのようなプロセスをたどり、プロトタイプはデザイン思考においてどのような位置付けとなるのでしょうか。
ここではスタンフォード大学のハッソ・プラットナー・デザイン研究所が提唱した「共感」「問題定義」「創造」「プロトタイプ」「テスト」の5つで構成される、デザイン思考の5段階モデルを元に解説します。

1.共感

まずはターゲットとするユーザーの持つ感情に共感するプロセスから始めます。ユーザーはどのような環境に置かれ、どのような価値観を持ち、どのように考え・行動するのか。ユーザーの感情に共感できなければ、ユーザーに刺さる製品をデザインすることはできません。
共感に必要な具体的なアクションとしては「観察する」「関わる」「見て聞く」などが挙げられます。より強い共感を得るため、自らが経験する一次情報を重要視しましょう。

2.問題定義

共感によって得られたユーザーのニーズやインサイトを深堀りし、ユーザーを主語とした問題として定義するプロセスです。ユーザーが欲するニーズは、ユーザー自身が言語化できないケースも多いため、しっかりと言語化し文章として明確に残す必要があります。
この問題定義の精度がその後の解決策の精度に直結するため、適切な課題を設定する着眼点が求められます。

3.創造

第3段階は「概念化」とも呼ばれ、定義された問題に対する具体的なアイデアを生み出す段階です。一般的に、アイデア出しには質より量を求められます。多様な意見の中から結びつく可能性も多いに秘められているためです。
アイデアを引き出すためのフレームワークは、ブレインストーミング、マインドマップ、オズボーンのチェックリストなど多種多様です。自社組織に見合った方法を模索してみてください。

4.プロトタイプ

最終的な解決策に近づくために試作品(=プロトタイプ)を作り、繰り返し検証していくプロセスです。この工程は「考えるために作り、学ぶために試す」プロセスで、製品の完成度を高め、課題達成を加速させる重要なポイントです。プロトタイプ自体が創造行為のテクニックになり得ることから、前項「3.創造」の領域をもカバーする工程でもあります。
プロトタイプは一度だけやれば良いというものではなく、目的やステップごとに分けて何度も行うべきプロセスですが、特にハードウェアの場合はソフトウェアとは異質です。修正が容易に行えないことやコストが大きいなどの問題があり、緻密な計画に沿って行う必要があります。

5.テスト

プロトタイプで製作した試作品を関係者やユーザーにリリースし、フィードバックをもらうプロセスです。プロトタイプは開発メンバーだけでなく、他部署の従業員やユーザーなど多くの人々に見てもらうのが良いでしょう。大切なのは、それらの人々から得られた意見や指摘、洞察などをキャッチし、より良い製品へと改善するための糧とすることです。

ここまでで、デザイン思考の流れにおけるプロトタイプの位置付けが見えてきたのではないでしょうか。プロトタイプは、第三者に評価してもらい完成度を高めるためのプロセスであるとともに、自身のアイデアを探く掘り下げるための重要なプロセスでもあるのです。

製品デザインにおいてプロトタイプが重要な理由

では、機械・電気系のハードウェアに関するプロトタイプについてはどうでしょうか。ここではプロトタイプの種類とメリットを知ることで、実際の製品デザインにおけるプロトタイプの捉え方を考えていきます。

プロトタイプの種類

プロトタイプには複数の種類があります。ここでは、製品化の流れに沿って代表的な種類をご紹介します。

ペーパープロトタイプ

クライアントからアイデアをヒアリングし、そのイメージをざっくりと表した段階のプロトタイプ。

ワイヤーフレーム

「ペーパープロトタイプ」でのイメージをさらに詳細な形状として表したもの。サイズやR形状など細かな寸法を入れ、機能面においても議論できるようなモデル。

3Dモデル

イメージを立体的に表したプロトタイプ。立体で表すことでより臨場的に製品を感じられ、部品位置関係が適切か、想定した環境に合うかなどをより把握しやすくなる。また、解析シミュレーション用のモデルを作成する場合もある。

機能試作

製品の機能だけに特化して作られる。特に電気部品の動作・制御面での検証がイメージしやすい。

モックアップ

機能試作とは逆に、外観に特化したモデル。主に意匠面において重視されるが、部品間の干渉などを確認する場合もある。自動車のクレイモデルなどが代表例。

製品(量産)試作

実際に動作する原寸大の試作品を作成する。製品(量産)試作を行うことで、機能・外観面ともに検証できる。製品にもよるが、一般的に量産までに何度か試作を繰り返すことが多い。

プロトタイプのメリット

続いて、プロトタイプを制作するメリットを見ていきましょう。

開発や製作の早い段階で問題点や修正点を確認できる

生み出したい製品のイメージを具体化することで頭の中のイメージと現物との違いを確認できます。特に関係者間での議論を活発に行うことで、目指すイメージに近づく速度が上がります。
ハードウェアは容易に設計変更を行うことが難しいため、修正が発生した場合の手間が大きいです。関係者間で認識の齟齬が発生しないよう、細かい部分まですり合わせをしておきましょう。

プロトタイプの制作で重要なのは、できるだけコストをかけずに素早く行うことです。そのためには「プロトタイプによって何を確認するか?」という目的をしっかりと定義し、その目的を達成するためだけの最低限のモデルを制作することが必要です。
量産前の試作ではすべての項目をチェックする必要がありますが、それには膨大な時間とコストがかかるため、機能試作のように目的に特化したモデルで順を追って進めることが求められます。

乾燥工程におけるプロトタイプ制作の具体例

筆者自身も、プロトタイプを制作することで最終製品の精度を高めることができた経験や、逆にプロトタイプを制作しないことで大きな失敗をした経験があります。

たとえば、洗浄機における乾燥工程でのエアナイフ。純水で洗浄した製品に水滴の汚れが残らないよう、10μm以上の水滴をすべて吹き飛ばす必要がありました。しかし、設計段階ではその設置角度や位置など、決めきれない不確定要素が多々ありました。
そこで機能試作として乾燥工程のみのプロトタイプを製作し、不確定要素を確認しました。角度や位置などの因子と水準の比較実験に加え、エアナイフの構造自体を複数用意し、比較検討しました。結果、当初の設計では水滴が残ってしまうことがわかり、また、水滴の動きからどのように改良すれば良いかの方向性も確認することができました。

このように、製品デザインにおいて用途に沿ったプロトタイプを製作することで、図面上では確定できない要素を一つひとつ確認していくことができます。

プロトタイプはその目的に応じてさまざまな種類が存在し、プロトタイプから得られる情報も多様です。そのため、「何を確認するか?」という目的を明確にし、関係者間で共有することが大切です。

プロトタイプのデザインを外注するメリット

製品のコンセプトやイメージをきちんと押さえたら、プロトタイプのデザイン制作を請負企業などに任せることも視野に入れましょう。外注することで以下に示す3つのリソースを有効活用することが見込めます。

デザインに必要な知識が不要

まず、デザインに必要な知識が自社では不要になります。アイデアをイメージにするスケッチ、スケッチしたアイデアを3Dグラフィックスにする技術など、デザインに必要となる知識は膨大となりますが、そうした技術や知識を自社で持っておくことが不要となります。
特に「業務の進め方」と「付加価値の提供」の2点についての効果が大きいと言えます。実績のあるデザイン請負企業であれば過去の豊富な経験則によって業務フローがおおむね出来上がっているため、初めてデザインに関わる人でも業務の進め方から提示してもらえるでしょう。
業務の進め方にリリースを取られない分、細部へのこだわりやその製品独自の難しさをどう解決していくかといった点に注力できます。そのため、より製品の付加価値を高めることができるでしょう。

デザインに必要なツール・環境が不要

次に、プロトタイプデザインを制作するために必要なツールと環境が不要です。3Dモデルを作成するためのソフトウェアや電気的特性を測定するための測定機器、また、クレイモデルを作る場合にはガレージのような場所も必要となります。こうしたツールや環境を自前で用意するには相応の投資が必要となりますが、外注することでこれらのコストを抑えられます。

時間の有効活用につながる

最後に、製品開発における一部のプロセスを外注することで、依頼者はほかの業務に注力できます。経験豊富な請負企業であれば、クライアントとの接点を最小限に抑える配慮も期待できるでしょう。
より効率的な業務遂行を目指し、発注者側も目的を絞った進め方を心掛けましょう。以下のようなカテゴリーでプロトタイプの目的を分けるとわかりやすいです。

アイデア掘り下げのためのプロトタイプ

初期のアイデアやコンセプトを元に、イメージを具現化するモデル。

評価のためのプロトタイプ

耐久性や信頼性など、検証を行うために制作されるモデル。

伝達と提示のためのプロトタイプ

関係者間での意思疎通を図る、あるいはユーザーへの提示を行うモデル。

まとめ

現代は国内の人口減少、一部のプラットフォーマーやAIによる産業構造の変化、グローバル化の加速など、複雑かつ複合的な要因により、社会・経済が見通せない不透明な時代です。このような時代においては、複雑化・多様化したニーズに応えるため、「ニーズありきで問題を解決する」デザイン思考が注目されるようになりました。
そのような時代背景において、本記事ではデザイン思考におけるプロトタイプの位置付けを確認し、その中でもプロトタイプというプロセスは製品の完成度を高め、課題達成を加速させる重要なポイントであることを確認しました。そして、ますます労働人口が減少傾向にある日本においては、外注の有用性が高いことを提示しました。
製品デザインにおいてプロトタイプを外注することで、「スキル・ツール(環境)・時間」という3つのリソースを有効活用することができます。

 

執筆者プロフィール:
Kamijo
10年以上「ものづくり」に携わってきた機械設計エンジニア。ものづくり・機械設計・生産技術・哲学・歴史・経済が得意な分野。

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